果樹栽培講座で学ぶ道法スタイル。

果樹園計画

私は自然栽培という農法で野菜を無農薬無肥料で育てている。と同時に、牧之原にある耕作放棄地を果樹園に生まれ変わらせようという活動もしている。こう書いてしまうと簡単なことのようだが、私の住まいから牧之原までは高速道路を使って2時間半ほどかかる距離にある。毎週通うのは難しく、頑張れば月に1回通えるといいかな? という程度しか通えない。

そんな場所を果樹に変えていこうと思った時に、『あまり手間をかけずに果樹を育てることができる技』として知ったのが、道法スタイルという果樹の栽培方法だった。

道法スタイルとは、植物のホルモンを活用して果樹を育てる斬新な栽培方法

道法スタイルとは、道法正徳さんという方が提唱している農法で、植物ホルモンの力を最大限に発揮し、その働きを活用しながら、果樹を育てていくものである。
植物ホルモンとは、植物の体内で作られており、極少量で成長や生理現象に作用を及ぼす物質である。代表的な植物ホルモンには、以下のような物がある。

  • オーキシン:枝の先端の芽や若葉など、成長が盛んなところでつくられるホルモン。茎や葉の伸長を促す。
  • サイトカイニン:根で作られて地上部へ移動する。脇芽の成長を促す。
  • ジベレリン:伸長成長を促すホルモン。役割としてはオーキシンと同様のもの。
  • エチレン:老化を促すホルモン。オーキシンと一緒になると伸長成長を促進する。
  • アブシジン酸:気孔の開閉を調整する。

これらのホルモンは単体で作用するのではなく、量や作用する場所、他のホルモンとのバランスによって変化する。それを考えながら、樹木に向き合っていくことになる。

育苗、剪定で活用されている
植物ホルモンを生かすための工夫。

道法スタイルでは、植物ホルモンは生かすための知恵が至るところにちりばめられている。まず、育苗。一本の棒のようにしたてられた棒苗とよばれる1年生の苗を購入したら、根の土を取って地面に植え、支柱を刺す。その支柱にしっかり縛るのだが、脇芽が出てきたら、その脇芽も支柱に縛っていく。脇芽から出る芽は摘み取りながら伸ばし続け、3メートルを越えたら紐をほどく。
我が家の果樹園でもやってみたのだが、苗が張り付けにされているようで非常に不自然な形に見える。が、オーキシンは枝の先端から下へと流れる際、枝の下側に溜まるような形で流れていきがちである。垂直に縛ることで効率よく下へ、下へと流すことができ、根っこの発生を促すことができるのだ。根っこができれば、その先端でできる成長ホルモンをたくさんつくることができる。つまり、葉や茎の成長を促すことにもつながっているのだ。

また、木の傷口を直すには、オーキシンとサイトカイニンというホルモンが混ざり合って作用している。サイトカイニンは、根で作られて地上部へと移動しているのだが、こちらも枝の下に溜まるような状態で移動していく。そのため、側枝を切る際に根元を残してしまうと、残った部分へと流れて行ってしまい、オーキシンと出会えなくなってしまう。こうなると残った根元が枯れ、痛んだりして、木全体へのダメージが広がってしまったり、ジベレリンが作用して余計に枝が出てきてしまうこともある。
側枝を切る際には、主枝に沿うように斜めにカットし、オーキシンとサイトカイニンが出会えるようにすると、傷口をしっかり塞いで直してくれる。

植物ホルモンのポイントを押さえれば、
道法スタイルは難しくない。

非常に特殊な栽培方法と捉えられがちな、道法スタイル。しかし、その理論は非常にシンプル。
果樹の場合、慣行農法では立枝をカットすよう指導されているが、本来、植物は自分で不要な実や枝を落とし、自分を整えるような性質がある。にも関わらず、元気な新しい枝を切り払い、古い枝を何年も使いまわそうとすることには疑問を感じていた。この点も、道法スタイルは違った。新しく生えてきた立枝を残し、古い枝と切り替えることで、木そのものをリフレッシュさせていくのである。植物の生理にも見合った栽培方法なのだ。
自然と調和したこの栽培方法で、野菜や果樹のチカラを最大限発揮しながら、美味しい野菜や果物を育ててみたいものだ。

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