メダカの産卵に振り回された騒動を振り返り、いま思うこと。

日常の話

「メダカが卵産んでる!」

 

娘の大声に呼ばれ、ベランダへ出る。我が家のベランダには、大きな水盤がある。ベランダのサイズに似合わないサイズの大きさで、時々、洗濯物のズボンの裾が浸かってしまうこともある。少々扱いに困ってきた水盤だが、これは亡き祖父の家から弟がもらってきた品でもあるから、思い入れがある。そこで、メダカを飼育することにした。

 

が、近所のホームセンターで購入した5匹のメダカはすぐに死んでしまった。メダカは輸送に弱く、ストレスで死んでしまうことがあると後で知る。そこへ、弟がメダカを持ってきてくれた。こちらは、ザリガニを採った時に一緒に採取した水草についていた卵からかえったものだという。小さすぎて見えないサイズを、よくよく数えて7匹。野生のメダカだったからなのか、移動のショックをもろともせず、内、6匹がすくすくと育ち、ひと回り大きく成長した頃、事件が起こった。体の大きい子が小さい子をつつくのである。

 

 

私は幼いころ、クラスの生き物係をしていたことがある。その時、教室で飼っていたメダカの世話をしていたのだが、大きなサイズのメダカが、小さなサイズのメダカをいじめて殺し、食べてしまうことがある。実際、大きなメダカの口から、小さなメダカの頭が出ているというおぞましい姿を目撃したこともあった。これは確かな情報である。

そこで、メダカのサイズ違いで3匹ずつ分けて飼育することにした。ただでさえ大きな水盤の横に、もうひとつ使っていなかった水槽を並べて見守っていた。

 

春になり、メダカたちの食欲が増し、良く食べるなぁ、近頃、お腹が大きな子がいるなぁと思っていたら、今朝の騒動である。

 

娘の指さす先には、腹にたくさんの卵を抱えて泳ぐ、メスメダカの姿かあった。これは、急ぎ産卵用の藻を買って来てやらなくては! だって、食べちゃうから。

 

そうなのだ。メダカは仲間もいじめて殺してしまうけど、自分たちの子孫となる卵も食べてしまうのだ。私が生き物係だった時、水草に着いた卵を温かく見守っていたら、大人のメダカの口の横にくっついていて、

 

「なぜだろう?」

 

と思っているうちに、卵が全て食べられてしまったこともあった。自分が生んだ子どもを、自分のたんぱく源として食べてしまうなんて人間では考えられないけれど、メダカの世界では、子どもはカワイイとか、みんなで大切に育てていきましょうという発想は皆無なのだから仕方がない。

 

ちょうど休日だったので、開店と同時にホームセンターへ駆け込み、産卵用と書かれていた人工の水草を2種類買って来て、メダカたちの中へ投入した。

 

その日、私は所要のため出かけなければならなかったため、娘に見張りを頼んだ。

「昼ごろまでには、水草に卵を産み付けるはずだから、卵付きの水草はこっちの金魚鉢へ移動しといてくれる?」

 

しかし、この作戦はうまくいかなかった。娘が目を離した10分ほどの間にお腹から卵が消え、人工水草には何も残っていなかったという。食べてしまったのだろう&人工水草ではダメなのだろう。残念。

 

 

夜、月を見ると、満月だった。

 

私が娘を妊娠していた頃に読んでいた本や、月のことを書いた本があり、そこの満月になると出産が増えると書いてあった。月の引力がそうさせるとか。次回の満月に、備えなくては…。

 

なんて思っていたけれど、翌日もまた翌日も、メダカは卵を産み続けたのである。

 

今度は、ホテイアオイを買ってきた。根元が膨らんだ緑色の葉の部分が水面から上に出ていて、根っこはフサフサした水草である。これにはたくさん産み付けてくれたのだが、毎日のように産むため、回収が追い付かない。卵がついたままでは食べられてしまうし、毎日新しい水草を投入することは困難だし…。

 

最終的には、水草についた卵を手で取り、保管用の水草の根の上に落とすという方法を取っていた。こんなことで大丈夫なのかと思ったが、意外にも大丈夫だった。

 

卵が固いから。

 

メダカの卵は黄色みがかった透明をしている。なんとなく、ふにゃふにゃとした弾力のあるものなのかと思っていたのだが、触ってみるとしっかり固く、花の種くらいの固さを感じるものだった。中には、触るとはじけてしまうものもあったのだが、それは無精卵であることがネットを検索して分かった。命をつなごうとしている卵は、固いのである。

 

こうしてまた順次、メダカが誕生してくることになったのだが、それはまたサイズ違いができてしまうことも意味していた。同じ日に生まれた子でも、2~3日の内にぐぐっとサイズが違ってしまうことがある。まだ大丈夫かな? と同室ならぬ同水にしておいたら、チビが激減してしまうことにもなった。しかも! 小さすぎて網ですくうと痛めて殺してしまうことになる。小さな容器で水ごとすくうしかないのだが、大きな子は泳ぎも上達しており、逃げ惑うので水をかき回してしまうことになったりもする。も~、メダカの世話って大変…。

 

そして今年、メダカが卵を産んだ。が、増やすのを辞めることにした。一昨年、弟のくれた初代のメダカたちの寿命が来たようで、数匹のメダカが他界。翌年もまた、その子らだったと思われるメダカが他界した。メダカの数を維持するのであれば、今年生まれた子達を保護して、サイズ違いにオロオロしながら仕分けして、大人に負けないサイズになったら大きな水盤に放てば良かったのだが…。

 

いま、ベランダには水盤が3つ並んでいて、ひとつには金魚が、2つにはメダカが泳いでいる。この数に落ち着くまでの混沌がすさまじ過ぎて。メダカたちには申し訳ないけれど、洗濯物の裾が濡れてしまう問題を減らしたいのだ。

そう思いながらメダカの水盤を眺めていたら、小さな小さなメダカが2匹、餌をつつきに姿を見せた。親の捕食から逃れて生き延びた運の強い子もあったことに感動する。しまい込んでいた水槽に手を伸ばす私がいる。

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